ダイバーシティ2.0を読み解き、自己成長に繋げようVOL.1

『ダイバーシティ2.0検討会 報告書』を読んで、分かること。第一回
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武蔵野大学経済学部 経営学科 准教授の
渡部博志先生

『ダイバーシティという概念自体が広く浸透し、多くの企業において様々な取組が推進されている一方で、形式的・表面的な対応も懸念される状況も生まれつつある今、まさに転換期であり、本来目指すべきダイバーシティ経営を実践するための方策を検討すべきタイミングではないか。いわば、「ダイバーシティ 2.0」へのステージアップが急務である。』
(ダイバーシティ 2.0検討会報告書 平成29年3月 経済産業省より)

Press編集 宮本は日々、企業の人事部、ダイバーシティ推進室、それぞれの現場で働く方にお話を伺う機会があります。
そのなかでダイバーシティの諸外国の取組みと今までの日本企業での取組み、現場の方のとらえ方のギャップを感じることが多かったのです。

そこで昨年、経済産業省から報告された『ダイバーシティ2.0 検討会報告書 ~競争戦略としてのダイバーシティの実践に向けて~』を読み解きながら、多くの方にダイバーシティ経営を理解していただき、自分の行動、考えに反映し、更には自己成長に繋げていただきたいと、この連載企画をはじめることにしました。
その第一回目の今回は、武蔵野大学経済学部 経営学科 准教授の渡部博志先生にお話を伺いました。先生は武蔵野大学しあわせ研究所の主任でもあり、武蔵野大学が「世界のしあわせをカタチにする」ために、全学横断的な仕組み作りを担っていらっしゃいます。そちらの研究もとても興味深いのです。

宮本:そもそも、なぜ組織が必要なのでしょうか?
渡部先生:
個人では成し遂げられないことを行うためです。
そして、組織で成果を上げるために必要なことは、
1、手分けして、分業。
  ここでダイバーシティの多様性が必要です。
2、力をあわせる、調整。
  これがコミュニケーション、情報共有が必要です。
この2つが大切ですよね。
手分けして、力をあわせることが出来れば、これで充分なはずですが、そうはいかない。
組織内の仕事を「やり遂げる」ためには、評価や監視、インセンティブやペナルティを与えることも必要になるのです。そして、この評価することが、とても苦手なのが、今の私たちではないでしょうか。
宮本:確かに、仕事で注意する、指導しても役割と思えないこと。他人の評価を過度に意識していること。フィードバックが上手くできない。また、他人の評価を純粋に判断できずに、所有資格で判断するなど、思い当たることは多々あります。
渡部先生:
戦後の経済成長の過程では、特に何かを考えなくても、与えられた仕事をこなしているだけで良かった時期もあったと思います。でも、そんな時代は終わっているのです。
宮本:ダイバーシティ2.0の報告書にもあるように、
人材戦略の要諦は、突き詰めれば「経営戦略に適合した人材ポートフォリオを構築し、
その人材を最大限活かして、付加価値を持続的に生み続けること」に尽きるとあります。
外部環境が変化すれば、必然的に経営戦略も変化し、企業が必要とする「人材ポートフォリオ」も再構築が迫られるのですね。「ダイバーシティの実現」がより一層求められていくのではないか、ということですね。

人材確保が難しくなっている!
渡部先生:
既存の枠組みにとらわれていれば、これからの日本は労働人口が減り続けてしまいます。働く人がどんどんいなくなるのです。既に、人材確保が厳しいと感じている方もいらっしゃるでしょう。
そこで、是非やらなければいけないのが、ダイバーシティ経営なのです。もう、女性の管理職を何パーセントにするとか、そんなことではないのです。女性の活用という問題だけではなく、定年制の問題、障害者雇用の問題、国境を越えた協業の問題、等々。従来の日本型雇用システムが制度疲労を起こし、待ったなしの状況です。
宮本:報道でいろいろな情報は得ますし、もちろん、社内でも問題提起などはあるのですが、個人個人の問題意識、危機感にはなっていないように感じます。俗に言う、「ゆでガエル」のようですが、意識改革はどうしたらすすむのでしょうか。

会社任せだけではない、当事者意識で考えてみよう!
渡部先生:
問題意識を持つには、例えば、都心でランチが500円で食べられる理由や、コンビニエンスストアで、留学生が多い現状を自分なりに考えてみてはどうでしょうか。
そして、この先、私たちの生活はどうなっていくのか、そんなことを良く考えてみればいいのです。
身近なことを考えるだけでも、もはや他人事では済まされないことに気づくはずです。
このように、仕事の場面だけでなく、自分事として当事者意識を持つことです。
意識改革は、簡単なことではありませんが、考え抜き、やり続けなくてはいけません。同質な中で折り合いつけて仕事する時代ではなく、これまでは共に働いたことがないタイプの人々とも、共通の目標を掲げて仕事をし、成果を上げていくのです。それが上手くできている状態が、ダイバーシティが名実ともに機能している状態でしょう。
宮本:渡部先生、ありがとうございます。
私も20数年前に、LGBTの部下からカミングアウトされた時に、LGBTについての学びの機会をつくりました。どんなことも、知ることが大切だと痛感しました。その後の私の人生にも、とても役立つ学びでした。今後も、さまざまな事を自分事で考えていけるようにします。
参考資料
ダイバーシティ2.0検討 報告書
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170323001.html