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Case 2

今回は、子育てしながら夫婦共働き、妻のキャリアアップを実現するためには、夫婦共にどんなライフのスキルが必要か?というお悩みです。新しい働き方、新しい家庭観を感じさせる貴重なケース、そして、実は私自身の家庭とも通じるところがあり、ぐっと乗り出して読ませていただきました。

[相談]

キャリアアップのチャンスををあきらめる妻を
見ているしかないのでしょうか

M・Hさん(30代男性・IT企業勤務)

私(夫・35歳)はIT企業でシステム構築チームのサブリーダー、妻(32歳)は商社勤務。共働きの私たちは、子どもを授かって、仕事と子育ての両立の難しさに直面し、とくに妻がせっかくのキャリアアップのチャンスをあきらめようかと悩み始めています。そんな様子を見ているだけの自分が情けなく、渥美先生の相談室をおたずねした次第です。

重いつわり、妊娠中毒症で入院……負担の多い妊娠期間を経て、無事2800グラムの女の子が誕生したときは、その小さな手足に触れ、妻への感謝で本当に涙がでました。
子どもが1歳1か月になって、妻は、もとの職場へ復帰。上司との面談で「この機会に、社員教育のプロジェクトに迎えたい」と妻が以前から希望していた仕事に抜擢されました。
妻の復職がスムーズにいくように、私は前倒しで2か月間の育児休業を取得することにしました。妻の妊娠出産が大変だった時期に仕事を休むことができなかったことを知っているチームリーダーが、今回は私の「家庭優先」をバックアップしてくれたおかげです。
最初の1か月は、私の慣らし期間、妻のそばで育児家事を見習い、次の1か月はいよいよ妻を会社へ送り出し、私は主夫として家事育児に専念。これは簡単なことではなく、家庭を守る大変さがよくわかり、正直、育休あけにはほっとしました。
妻がセミナー開催などで土日出勤となる場合は、私が育児担当。平日は妻が時短を使ってお迎えをするというローテーションです。が、子育ては予定どおりにいかないものなんですね。
ゴールデンウィーク前までに、子どもは2回体調を崩し、妻が3日、私が2日、休暇をとって乗り切りました。夫婦の工夫だけではすまないことも出てきました。妻は、時短を使うときに同僚がサポートに入ってくれることを心苦しく感じるようになったようなのです。
「子育てもほどほど、新しい仕事もほどほど……という宙ぶらりんな自分が悲しい。いまは子どもと向き合う時間を多くとり、仕事は降格してもらおうかと考えている」と言うのです。妻が新しい仕事に意欲と誇りをもっていることを知っているだけに、キャリアアップをいったん諦めようとするこの言葉には、胸を突かれる思いでした。
一方で私のなかには、これ以上自分が育児に時間をさくのは難しい、妻が負担の軽い仕事に戻ってくれたらありがたい……という正直な思いもあり、このままでは、妻が不満をためるだけではないのか、この「壁」をどう乗り越えていけばいいのか悩みます。
世の中には、二重保育や家事サービスをフル活用して、夫婦ともにバリバリ働いている家庭もあり、わが家にもそういう選択肢もあるとは思うのですが、「そこまでしなくても」とか、「そこまでしたくない」などと考えてしまうのは、男の立場だからでしょうか……。

[渥美]

「働きながら子育て」に大事なスキルは、
家事育児のバトンリレーの仲間を増やすことです

男女共に働き、報酬を得て、子育てや介護など様々なライフシーンを協力して乗り越え、楽しみ、生きていく時代が始まっています。妻子を養うのが男の甲斐性という近代日本の価値観が崩れ、新しい家族観やパートナーシップや仕事観が生まれようとしている、そのまっただ中からのご相談と受け取りました。
「壁がある」と感じてしまうのは、単に乗り越えるスキルが身についていないだけ、仕方ないことでしょう。
私自身の体験から、具体的な二つのアドバイスをします。まず最優先で、「育児家事を助けてくれる相手や仲間を増やすこと」です。夫婦双方の親に支援を求めることはすでに視野に入れておられると思います。しかし、もっと大事で有効なのは保育園のパパ友ママ友に声をかけてみることです。ワークライフバランスに悩む2~3家族が集まれば、順繰りにお迎えと食事の当番をするというローテーションが組めます。M・Hさんのお子さんはまだ1歳代なのでゆるやかに進めていきながら、3歳にもなれば5家族でお当番は週1!も夢ではありません。
これをぼくは「家事育児のバトンリレー」と呼んで、働きながら子育てをする人の大切なスキルとして広めています。M・Hさん、バトンを最初に取りにいく人になってください! また、家事サービスなどもどんどん利用しましょう。その出費は、子育てのこの時期だけのこと、気持ちを切り替えてあまり負担感をもたないことです。
もうひとつは、「妻の出世を、夫の誇りにしよう」です。M・Hさんのご相談からは、このご夫婦は互いに働く理由を理解し尊重し合うことができるに違いない、というとてもいい感性を感じます。夫婦の間に生まれそうな壁を、夫婦で話し合うチャンスに生かしましょう。働く人なら与えらえた材料や条件の中で「どうしたらいいだろうか」と議論をする訓練ができています。そのように家庭でも話し合えばいいのです。我が家も、子どもを真ん中に置いて話し合いをやっています。夫婦が角を突き合わせていても、上の子が意外にも的を射た意見を言ったり、下の子のつぶやきが爆笑ものだったり、一触即発はどこへやら、なかなかいいものです。
あなたの奥さんの能力と希望を知る職場の上司は新しいポストを用意して、育休からの復帰を迎えるというマネジメントをしました。ここはなんとしてもライフの環境整備を急ぎ、妻の意欲を後押しすることを急ごうではありませんか。
女性が仕事を続けること、続けられるようにすることが女性活躍推進の基本だと私は思っています。仕事の有無で、生涯賃金が平均2億円違ってくるといわれます。子どもが大きくなってからの夢を実現するための原資にもなるでしょう。今の生活だけでなく未来の豊かさへ目を向けましょう。
最後に、M・Hさんへ。家庭や育児で生じる様々な壁を乗り越えて「我が家のダイバーシティ&インクルージョン」を率先して示すかっこいいお父さんになってください。

ワークとライフがばらばらざんすと嘆く妻

タイトルイラスト 丸山誠司
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