LINEで送る

title-atsumiconsult

Case 8

 東日本大震災を機に急増したテレワーク導入企業ですが、その後、数を減らしたといいます。理由に、情報セキュリティへの不安と労務管理の難しさが、依然としてあげられています。
 しかし、技術的な環境整備が進んだ今、情報漏洩はマシンエラーよりもヒューマンエラーによるもののほうがはるかに多いのです。その内訳は、単純な誤操作やモバイルデバイスの紛失といった悪意のない過失から、勤務先に恨みがあったとか、個人情報の売買が目的だったなどの根深い人為的過誤まで、多岐に渡ります。
 また、「見えないところでサボられては困る」「うちの業務はテレワークに向かない」といったマネジメント上の理由も、導入をためらう要因になっています。
 そんな状況の中、今回のお悩みは、私が「失敗する」と危惧するパターンのひとつです。

[相談]

テレワークの導入を社内に提案したい

匿名希望(46歳女性・化学製品メーカー勤務)

 テレワークについてお尋ねします。グローバル展開している企業で、プロジェクトリーダーを務めています。海外の支社やビジネスパートナーとテレビ会議する時などは、時差があることから深夜勤務もやむなしです。
 そういう場合、在宅で仕事ができたらと思うのですが、テレワークによる在宅勤務は育児休業者や障害者に限定されており、一般社員は対象ではありません。どこまで対象者を広げるか、会社も思案のしどころでしょうが、誰もが利用できるようになれば、介護や病気などで制約が生じた時も、すきま時間に仕事ができると思うんですよね(お給料は稼働時間に応じて減収したとしても)。
 テレワークの一般業務利用を社内に提案する際、どういう説得の仕方があるでしょうか。

[渥美]

導入で問われるのは
評価者の力量です

 限られた社員のみへのテレワーク許可は、中途半端というか、グローバル企業においては残念としか言えません。
 なぜ利用を一部の社員に限定すると失敗するのか。
 まず、利用者の肩身を狭くします。あの人は育児中だから、障害があるからと、「特別扱い」の烙印を押すことにほかならず、それが本人たちにさらなる引け目を感じさせます。周囲にはマイノリティ社員への差別の目を植え付け、モチベーションダウンも引き起こしかねません。
 また、ほかの人が出社している中、私は家で仕事をさせてもらっている。そのぶん、頑張らなければ……。利用者がそんな思考回路に陥ると、職場にいる時以上に仕事に時間を費やしがちで、結果、長時間労働を助長します。
 テレワークの利用は全社員を対象にするべきです。
 ただ、私が想像するに導入をためらう背景には、マネジメント能力不足の露見を恐れる管理職層の無言の圧力があるようにも思います。
 というのも、私自身がテレワーク利用者として実感しているものに、テレワークにはスキルフルな働き方が求められること、そのため一朝一夕では目に見える成果が上がらないといった側面があります。管理職は、テレワークにはそういう側面があるのだと理解した上で、部下の能力を引き出し、成果を上げさせ、評価しなければならない。テレワーカーへの評価が低いとしたらマネジメントに不備があったことにほかならず、つまり評価者の力量が問われるわけです。
 目の前にいない部下にどう仕事を割り振り、出社している時以上に成果を出させるか。それにはまず、部下一人ひとりの業務把握が必要です。ですから、業務のタコツボ化を放置してきた管理職ほど、これができずに嫌がるでしょう。
 しかし、逆の見方をすれば、テレワーク導入は業務改善とマネジメントスキルに磨きをかける絶好のチャンスであるとも言えます。チームの生産性を上げるためにも管理職自らテレワークを経験しておく、そう考えてもいいのではないでしょうか。

テレコンで実感、
テレワークのメリット

 私の妻が勤務するIT企業は外資系ということもあり、かなり以前からテレワークを導入、活用しています。はたで見ていると、本社があるアメリカの標準時間に合わせて、在宅でテレコン(teleconference:離れた場所での会議、テレビ会議、電話会議)を行うこともあるようです。社員は会議が始まる時間まで自宅で待機すればよく、会社に居残る必要がありません。
 これにより、会社にとってはアイドルタイムに発生していたコストの削減になる、本人にとっては仕事以外でやりたいことに時間が割けるなどの、効用がもたらされています。ご相談者は海外との会議のために深夜勤務もされるとのこと、長時間労働は心身疾患の原因にもなるので、コスト面と健康面の効用をアピールしてみてはいかがでしょう。
 そして、私自身がテレワーカーであり、メリットだと感じているものに、「コミュニケーションがとりやすい」という側面があります。よくテレワークの導入をためらう声に「コミュニケーション不足になる」がありますが、私の経験上、決してそんなことはない、むしろ密になることもあると思っています。
 例えば、一堂に会する会議の場合、横に座っている人の顔が見えづらかったり、離れた席の人の声が聞こえにくかったりしませんか? その点、テレコンならモニター越しとはいえ面と向かって話しかけてくれるので、表情を見逃したり意見を聞き逃したりすることなく、効率的で建設的な会議ができると思います。
 離れた場所にいる社員とミーティングする際も、テレコンやスカイプのように映像を伴うオンライン通話が有効です。特に私の場合は早口なので、音声のみの通話に頼っていた頃は、「渥美さん、なんかコーフンしてしゃべっているけど怒ってる?」みたいに受け取られることが少なくありませんでした。これをビデオチャットできるオンライン通話に変えたところ、「顔が笑っていたから安心した」など、いいように勘違いしてくれるようになったので助かっています。
 とはいえ、テレコンだのビデオチャットだののITツールは、自ら経験しなければそのメリットもデメリットもわからないでしょう。制約の有無にかかわらず、あらゆる人材を活用しなければ生き残れない人口減社会に突入した今、新しいシステムの導入に恐れず、前向きに検討することをおすすめします。

テレワークが 育児社員だけとは いくじなし

タイトルイラスト 丸山誠司
LINEで送る

▲TOPに戻る
【登録会員限定】ご相談はこちらから