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Case 7

WLBコンサルティングの依頼を受けて現場に入ると、メンタルヘルス不調による休業者の増加が必ずといっていいほど、昨今の課題として持ち上がります。
専門医でもない素人ながらの考えで恐縮ですが、私は数々の事例を見聞してきた経験から、職場のメンタルヘルス不調には2種類あると分析しています。ひとつは早期発見が必要な「真性メンタル」、もうひとつは制度濫用を狙った確信犯的な「偽装メンタル」です。
今回のご相談は前者が社員にいるという状況から、真性と偽装の見分け方も含めて、この問題を考えてみたいと思います。

[相談]

メンタル休業を偏見の目で見てしまう

M・Gさん(49歳男性・家庭用品メーカー勤務)

 私の勤務先は早くからワークライフバランスに取り組み、育児や介護のための諸制度を充実させ、実際に活用されているという点で優良企業だと思います。その延長で、病気休業への理解もあります。
 ただ、メンタルヘルス不調から長期休業し、やっと復帰したと思ったらまた休む、というケースがあるんですよね。制度上、本人がいくら望んでも産業医の許可なくしての復帰はありえないので、本当に調子が悪いのだと思いますが。
 でも、メンタルで休みがちな部下や同僚を持った仲間の話を聞くと、多くの社員(特に営業職)が休日出勤やむなしで働いている中、なんだか釈然としません。「休めるのも俺たちが売上げているおかげじゃないか」「俺たちも、ちょっと心が不調でとか言って休むか」なんて、冗談めかして愚痴ることも。「本当に調子悪いの?」なんて、偏見の目で見てしまう自分もいます。
 私の部署にはまだメンタル休業者は出ていませんが、そういう社員にはどのように対応するといいでしょうか。ケガとか内臓疾患といった、わかりやすい原因ならいいのですが、メンタルの場合は難しいです。

[渥美]

制度上のシステム任せにせず、
会社が本気を見せることが重要

 先にお断りしたように素人の観点からですが、「真性メンタル」と「偽装メンタル」の見分け方をお話します。
 まず、私が見たところ真性メンタルは、思考のベクトルが内向きです。できないのは自分の努力が足りないからだ、自分が悪いのだと考えます。これを放置していると自死に追い込みかねないので、早期発見と専門的な治療が必須です。
 一方、偽装メンタルのほとんどは、ベクトルが外向きです。うまくいかないのは部長のせいだ、同僚が足を引っ張っているなど、原因は自分の外にあると思っています。それが高じて、「会社のせいで不調になったんだから、私が休むのは当然の権利だ」と主張する場合があります。
 そういう偽装メンタルに悩まされている企業の多くが、ご相談者の勤務先のように優良企業と目されているところです。「くるみんマーク」を取得しているのはもちろん、子育て支援を皮切りに制度の充実を図り、そのことを社内外にアピールしています。しかし、偽装メンタルを一人出すと複数に膨れ上がるので、コンサルティングとしては会社のせいにできないような職場づくりと、そのための業務改善を提案します。
 ある中小の金融機関では、現役を退いた元経営トップが、全職員の家庭訪問をなさっています。「独り言が多くないですか」「ふさぎ込んでいないですか」「やけ酒をあおっていないですか」など尋ね、職場では見せない顔を家族に教えてもらうためでした。
 すると真性メンタルの場合、家族がこれを渡りに船とばかり、積極的に情報提供してくれるのです。そこから本人と話し、産業医につないで治療を進めると同時に、了解を得た上で職場でも情報共有する。すると業務配分についても不満が出ません。ご相談者の職場のように周囲がモチベーションダウンを起こしている、それは最も避けるべき事態です。
 2015年12月から、従業員数50人以上の事業場にストレスチェックの実施を義務付ける「労働安全衛生法の一部を改正する法律(通称:ストレスチェック義務化)」が施行されます。しかし、メンタルヘルスへの対応は、ストレスチェックして産業医につないで時折面談してといった制度上のシステム任せにせず、会社が本気を見せることが重要だと私は思っています。

あの人はなぜ休むのか。
相手を主語にして考えてみては

 私は、困っている人には困っていない人のほうから歩み寄るべきだ、という考えです。
 そういう考えに至った背景には、統合失調症を発症した父のとの経験があります。もともと軽度認知症で要介護だったところに、「お前は由喜じゃない。由喜の皮を被った宇宙人だ!」と真顔で断定し、私を拒絶するようになったのです。仰天しつつもその2日前、父に口答えしたことを思い出しました。意味不明な意見だったから正しただけなのに。しかし、それがショックだったのか……。
 さらに、当事者が書いた体験談を本で読みました。すると、統合失調症の症状には、「自分は周囲の人から殺意を抱かれている」と思い込むものがあるらしいんですね。これには驚きました。
 それからです、相手にはこの世界がどんなふうに見えているのか、想像してみることも大切だと思うようになったのは。ましてや相手が病人や高齢者なら、こちらから歩み寄らないと。父はその後も、「母さんを探しに行く」と言って出かけようとしたりしますが(母は何年も前に亡くなっているんです)、そういう時は否定せず、「行先の心当たりがあるから、夕方になっても帰ってこなかったら一緒に探しに行こう」と言って、相手に見えている世界を受け止めるようにしています。
 真性メンタルについても、相手を主語にして考えてみてはいかがでしょうか。「○○さんはこれまで業務に穴を空けたことがない」「○○さんはむしろ手抜きができない人だ」「それなのに今、会社に出てこられないという。○○さんはそれほど困っているのか」のように。
 心の風邪で苦労した人ほど、周りの人の痛みがわかる、その痛みをくるみこんで解決策を考えてくれる人になる、そう思っています。偽装メンタルについてはアプローチが異なるので、またの機会に。

心が風邪をひいただけ その苦労はきっと 人の痛みもくるみん

タイトルイラスト 丸山誠司
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