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日本総研 研究員レビューVOL.7

働く女性の未来を強くする――
「お金への意識」を考える
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ESGアナリスト
小島明子

小島 明子 (こじま あきこ)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター/ESGリサーチセンター
ESGアナリスト
1976年東京都生まれ。1999年日本女子大学文学部卒業、2011年早稲田大学大学院商学研究科修了(経営管理修士)。金融機関を経て、2001年に株式会社日本総合研究所入社。環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からの企業評価業務に従事。その一環として、女性を含む多様な人材の活躍推進に関する調査研究、企業向けの女性の活躍や働き方改革推進状況の診断を行っている。2016年4月から現在まで、プレジデント・オンラインで連載。著書「“女性発”の働き方改革で男性も変わる、企業も変わる」(2018年3月27日に経営書院より出版)。
 平成28年の給与所得者の平均年収は、男性で521.1万円、女性で279.7万円となっています。5年前(平成23年・男性428.2万円、女性232.9万円)と比べて、女性の平均年収はほとんど増えておらず、300万円未満であることに変わりはありません(国民給与の実態調査(国税庁))。
 内閣府「国民生活に関する世論調査(平成29年6月)」によれば、現在の所得・収入に満足と回答した女性は、18〜29歳が56.9%、30〜39歳が51.2%、40〜49歳が54.4%、50〜59歳が53.1%であり高いとは言えません。また、現在の資産・貯蓄に満足と回答した女性は、18〜29歳が46.0%、30〜39歳が36.8%、40〜49歳が36.7%、50〜59歳が40.8%であり、所得・収入に対する満足度と比べてさらに低くなっています。
 昨年、女性活躍推進法が施行されるなど、社会では女性の活躍推進が注目されるようになりましたが、経済力の向上という点では未だに課題があります。本稿では、働く女性のお金に対する意識の現状と課題に着目します。
課題1
強い家計を作るため……分かれる選択
「仕事に打ち込む」層、「節約に注力」層
 「働く女性のくらしとお金に関する調査2018」(日本FP協会調べ)によれば、老後まで安心できる強い家計を作るために必要だと思うこととして、「できるだけ収入を増やす」(49.2%)が最も多く、「できるだけ支出を減らす」(45.2%)、「お金の知識を身につける」(28.3%)と続きます。
 実際に、生活の余裕や貯蓄を増やすために行っていることを女性の就業形態別に見ると、正規職員は、「家計簿をつける」(35.8%)が最も多く、「変動費を節約する」(29.9%)、「固定費を節約する」(22.2%)と続きます。「仕事を始める・仕事に打ち込む」(8.6%)、「キャリアアップをはかる」(8.8%)という回答は1割にも満たない状況です(図表1)。
 一方、女性役員・事業主の回答を、正規職員含めた他の就業形態の女性と比べると、「家計簿をつける」(37.3%)、「固定費を節約する」(33.9%)が同様に上位に来ているものの、「仕事を始める・仕事に打ち込む」(28.8%)、「キャリアアップをはかる」(11.9%)については他の就業形態の女性よりも割合が高くなっています(図表1)。
 正規職員は、昇進や昇給等収入を上げるためには、長期間にわたる努力が必要となるため、すぐに成果の出る節約を優先する一方で、女性役員・事業主は、成果が直接の収入の向上につながりやすいことや、役員・事業主になるまでの経験で、キャリアアップへの投資の重要性を理解していることを反映した結果と考えます。
 節約をすることも大切なことですが、節約を続けていても、生活の余裕や経済的なゆとりが大きく得られるかという点には疑問が残ります。しかし、キャリアアップへの投資を行うことで得られる収入は、その人自身の努力次第で、増やすことが可能です。
 強い家計を作るためには、女性(あるいは妻)のキャリアアップへの投資(時間とお金を含めて)を改めて考え直してみてはかがでしょうか。

図表1 生活の余裕や貯蓄を増やすために行っていること(複数回答可)
課題2
家計の見直し意識が最も高まるのは、
子どもが小学生の時
 同調査によれば、2018年度に行いたいこととして、「美容・ダイエット」(37.4%)が最も多く、「健康維持・増進」(34.4%)、「趣味の充実」(29.5%)と続きます。「家計の見直し」(20.0%)、という回答は上位から4番目です。
 子どもの成長段階別に見ると、乳幼児・未就学児を持つ女性で最も多い答えは「美容・ダイエット」(48.5%)であり、「家計の見直し」(34.3%)、「健康維持・増進」(30.3%)と続きます。小学生の子どもを持つ女性で最も多いのは「家計の見直し」(40.0%)であり、「健康維持・増進」(34.7%)、「美容・ダイエット」(32.0%)と続きます。子どもが小学生になると、「家計の見直し」への関心が高まる一方で、上述したように「キャリアアップ」を選択する女性は約1割に留まっており、ここでもキャリアアップへの投資の優先度の低さが窺えます。
 また、「節約したくない」、「もっと増やしたい」と感じる費用への設問に対する答えを子どもの成長段階別に比較をすると、「子どもの教育費」という回答が、乳幼児・未就学児を持つ女性で28.3%、小学生の子どもを持つ女性で32.0%と高くなっています。小学生の子どもを持つ女性では、同じ問いに対して「遊興費・趣味・レジャー」(14.7%)との回答が最も低くなっており、子どもの成長に伴って自分の遊興費より教育費を優先する姿が見て取れます(図表2)。
 働く女性は、専業主婦に比べて自由になるお金が多いようにイメージしがちですが、子どもが生まれると教育費の確保等を目的に節約傾向を強めるのが現状なのです。
 筆者が子育てをしながら働く女性にヒアリングをしてみると、公教育への不安などを理由に、子どもの未来への投資を先行し、自己投資が後退する女性が少なくないと感じます。しかし、そもそも女性の生涯収入が増やすことができれば、子どもに対する未来への投資を増やすこともできます。
 子どもの未来への投資をより増やすためにも、働く母親のキャリアアップへの投資にも今一度、目を向けてみてはいかがでしょうか。

図表2 2018年度でも、変わらず確保したい(「節約したくない」「もっと増やしたい」と感じる)費用(複数回答可)
課題3
年収700万円以上の世帯の約4割が
家事支援サービスを利用
 経済産業省「平成26年度女性の活躍推進のための家事支援サービスに関する調査」(野村総合研究所実施)では、家事支援サービスの利用者のうち、最も多いのが世帯年収700万円以上(44%)の共働き世帯であることが明らかになっています。
 また、家事支援サービスの既存利用者の約9割はサービスに満足しており、家事支援サービスのメリットとして、「自分の時間や仕事の時間が取れること」、「肉体的・心理的負担が軽減すること」などを挙げています。共働きで収入が高い世帯ほど、家事の負担軽減に役立つサービスを利用し、自分の時間や仕事の時間の確保のために投資している姿が窺えます。
 同調査では、世帯年収の高い共働きの女性が、過去年収が低かった時に家事支援サービスを利用していたか否かは分かりません。しかし、働く女性の年収が上がれば家事支援サービス等のサービスを使うようになると解釈すれば、空いた時間を仕事や勉強のために活用できるという点では、キャリアアップにつなげられると考えられます。
 課題2の「家計の見直しへの意識が最も高まるのは子どもが小学生のとき」では、子どもが小学生になると家計を見直す傾向が強くなると述べましたが、前述した家事支援サービスへの投資に代表されるように、節約ばかりに向いていた目が女性(あるいは妻)の収入を上げるためのキャリアアップへの先行投資に向かうことを期待したいところです。
自己投資を続け、
活躍のチャンスを逃さない生き方を
 厚生労働省の女性活躍推進企業データベースの現在の登録企業数は9,132社(データ公表企業)、10,973社(行動計画公表企業)に上り、多くの企業が意欲を持って女性の活躍推進に取り組んでいることがわかります。
 女性が活躍できるチャンスが増えてきているからこそ、働く女性の多く(あるいは働く妻を持つ配偶者)が、キャリアアップにつなげていくための自己投資(働く妻への投資)を続けることで、より良い未来に向かっていくことができると信じています。
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